Top > Others >> プロモーション・システムの利用
2003(平成15)年 6月 1日、「小型船舶操縦士免許制度」が大幅に改訂されました。(※詳細は Others >> 小型船舶操縦士制度 で解説しています。)
今回、この改訂で注目されている「プロモーション・システム」(Promotion System:昇進制度)を利用して一級小型船舶操縦士( 5トン限定)に挑戦しましたので、その概要をレポートします。
また、プロモーション試験を受験する場合に一番の難関である「航海計画」(海図問題)について、受験対策にも利用できるように少し詳しく説明しています。
2004年12月13日
※本ページのオリジナルは一級小型船舶操縦士( 5トン限定)に関して記述していましたが、平成16年(2004年)11月より 5トン限定区分が廃止されました。この規制緩和に伴い、オリジナル・ページにあった「5トン限定」の記述の一部を削除しましたので、ご了承ください。規制緩和に関する詳細は、マリンレジャーの活性化に向けた小型船舶制度の整備等について(国土交通省、平成16年10月22日)をご覧ください。
プロモーション・システムについて
プロモーション・システム(Promotion System)というのは、日本語に訳すと「昇進制度」ということになります。小型船舶操縦士免許(旧海技免状)の場合、改訂前は上級の資格を取得しようとすると、上級資格の試験科目をほとんど受験(実技試験の一部に免除あり)する必要がありました。しかし 2003年 6月 1日の改訂によって、現行資格を受験するときに習得した知識や技能については免除され、上級資格に不足する差分の科目のみを受験することで、上級資格を取得することが可能となりました。
上級移行パターン | 免除される試験科目 |
---|---|
一級( 5トン限定) → 一級(限定なし) | 学科全部免除 |
二級( 5トン限定) → 二級(限定なし) | 学科全部免除 |
二級( 5トン限定) → 一級( 5トン限定) | 学科1部免除、実技全部免除 |
二級(限定なし) → 一級(限定なし) | 学科 1部免除、実技全部免除 |
二級( 5トン限定) → 一級(限定なし) | 学科 1部免除 |
特殊 → 一級又は二級(湖川小出力限定除く) | 学科 1部免除 |
特殊 → 湖川小出力 | 学科 1部免除 |
2004年12月13日
*この表は、平成16年(2004年)11月の 5トン限定区分の廃止以前のものです。
下級資格から上級資格へ移行するパターンは上の表のようなものが考えられます。例えば黄色の背景で示している、今回私が挑戦した「現行 二級(旧四級も該当)の免許取得者 → 一級への移行」の場合、実技試験の受験は必要なく、学科試験も一部が免除されます。学科科目の一部免除は、「一部免除」というより「一部受験」と言った方がふさわしいでしょうか、「上級運航 I」および「上級運航 II」の2科目のみの受験となります。
このように新しいプロモーション・システムを利用すると、ユーザにとっては最低限の負担で上級資格が取得可能になります。
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受験に必要な手続き
《 二級 → 一級の場合 》
2000(平成12)年に「四級小型船舶操縦士」を取得したときは、ボート免許が初めてであったので自宅近くのボートスクール に入校しました。今回は実技試験が免除されるということもあり、個人で受験することにしました。個人で受験する場合、情報不足が気がかりですが、財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会 JMRA(特定事業本部)でボート免許に関する全ての公式情報が提供されています。JMRAは運輸大臣の「小型船舶操縦士試験機関・更新講習指定機関」に指定されており、全国各地で定期的に小型船舶操縦士試験を実施しています。試験の日程や受験手続きについてはホームページで詳しく解説されていて、受験申請も JMRA に提出します。
受験手続きについては、JMRAのホームページ に詳しく説明されていますが、概要を示すと以下のようになります。
- JMRAで「試験日程」を確認します。各地で比較的頻繁に実施されています。
- 受験日程を試験の実施されるJMRA地方事務所に電話などで再確認します。会場の都合などで変更や中止になることがありますので、事前に問い合わせた方が良いでしょう。このとき、受験申請に必要な書類の入手や手続きについても確認しておきます。
- 受験申請に必要な書類一式を地方事務所に提出します。申請書等の関連書類は地方事務所にあり、送料を支払えば郵送で入手や提出が可能です。詳しくは地方事務所に問い合わせてください。申請期間は試験開始日(学科試験の行われる日)の20日前から 7日前までと決められています。試験手数料は身体検査を会場で受ける場合は 9,100円(身体検査手数料 3,200円+学科試験 5,900円)、身体検査証明書を提出する場合は 7,100円(身体検査手数料 1,200円+学科試験 5,900円、※身体検査証明書を提出しても手数料は必要です。)となっています。納入は現金または郵便為替で行います。
※試験手数料は改訂される場合があります。事前にJMRAで確認してください。 - 申請期間が終了後、JMRAから受験票が郵送されてきます。
書類 | 数 | 備考 |
---|---|---|
小型船舶操縦士国家試験申請書 | 1 | A4サイズのOCR用紙です。用紙はJMRAの地方事務所で入手でき、送料を負担すれば郵送してくれます。 |
受験票・合格証明書 | 1 | 「小型船舶操縦士国家試験 受験票」と「操縦試験合格証明書」が左右に繋がったカードで、真ん中にミシン目が入っています。これもJMRAの地方事務所で入手できます。 |
写真(縦45mm、横35mm) | 2 | パスポート用写真の規格と同じです。受験票と合格証明書に貼付します。合格後の免許申請に 1枚必要ですので、計 3枚準備しておいた方が良いでしょう。 ※身体検査証明書を提出する場合は、貼付用に更にもう 1枚必要です。 |
「本籍記載の住民票の写し」のコピー | 1 | 「本籍記載の住民票の写し」(役場で入手します)のコピーが 1枚必要です。合格後の免許申請に「写し」が必要ですので、受験申請にはそのコピーを提出します。 |
身体検査証明書 | 1 | 学科試験の会場で身体検査が行われますので、会場で身体検査を受ける場合は必要ありません。事前(6ヶ月以内)に病院などで検査を受ける場合は、所定の「身体検査証明書」に記入・証明されたものを提出します。視力・弁色力・聴力などの簡単な検査ですので、料金や手間を考えると会場で受けた方が良さそうです。*1 |
操縦免許証・海技免状のコピー | 1 | 現有あるいは失効している免許証・海技免状のコピー。免許申請時に旧の操縦免許証等を返納しますので、受験申請にはコピーを提出します。 |
受験票の送料 | 1 | 受験票は簡易書留で郵送されてくるので、その送料として 440円が必要です。納入は現金か切手で行います。 |
2004年10月10日
*1:身体検査の中で「弁色力検査の基準及び検査方法」が2005年 1月から改正される予定です。 詳細は、小型船舶操縦士に係る身体検査基準の改正について(国土交通省、平成16年10月 5日)をご覧ください。
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受験の準備
《 二級 → 一級 の場合 》
受験申請に前後して受験の準備を進めますが、独学で受験されるには、以下のような参考書および問題集が役に立ちます。
参考書名 | 発売元 |
---|---|
小型船舶操縦士 学科教本II (財)日本船舶職員養成協会 編著 | 舵社 |
一級小型船舶操縦士「上級科目」 問題集 (二級[旧四級]から一級への進級用) | 舵社 |
練習用海図 No 150 日埼至月埼 | 成山堂書店 |
練習用海図 No 200 長埼至角埼 | 成山堂書店 |
参考書と問題集は 株式会社 舵社の小型船舶受験用参考書です。教本の方は小型船舶教習機関で使用されているものと同じで、いずれも 舵社の出版物サイト から直接購入することが出来ます。
「練習用海図」(2種類)は実際の試験で使用する海図と同じもの(※タイトルが「試験用」となる以外は ...)ですが、問題集には海図が付属しないので、別途入手する必要があります。発行元の 株式会社 成山堂書店 に問い合わせてください。
「一級小型船舶操縦士 学科試験」には「海図」を用いた問題があり、海図に航路を記入したり、自船の位置を書き込んだりします。そのため、上記の参考書以外に、「三角定規」(30cmくらいの 2枚セット 1組)、コンパス、ディバイダー(いずれも脚長 110〜130mm程度)が必要です。0.1海里の精度(海図上の実寸法で 0.9mmほど)で解答しますので、出来るだけガタのない精度の高いものが好ましいでしょう。海図記入には細めの鉛筆の方が使いやすいので、0.3mm(BかHB)程度の、OCR記入用には太めの 0.7〜0.5mm(BかHB)程度のシャープペンシル、そして修正用にプラスチック消しゴムを準備しておきます。
受験科目は大きく分けて「上級 運航 I」と「上級 運航 II」の二つです。問題数は全部で14問あり、その内訳は以下のようになっています。
上級 運航 I : 8問 | ||
科目 | 内容 | 問題番号 |
---|---|---|
航海計画 | 全航程の距離と所要時間(海図使用) | 問51 |
船位の測定(海図使用) | 問52 | |
流潮航法(海図使用) | 問53 | |
航海計画に関する注意事項、航海中の注意事項、航海計器、救命設備、通信設備 | 問54 | |
気象・海象 | 気象予測、潮流、海流 | 問55 |
潮汐 | 問56 | |
荒天航法 | 荒天航法、台風避港 | 問57 |
海難防止 | 海難事例 | 問58 |
上級 運航 II : 6問 | ||
科目 | 内容 | 問題番号 |
---|---|---|
機関の保守整備 | 燃料消費量、航続距離、ディーゼル及びガソリン・エンジンの基本 | 問59 |
燃料油系統、潤滑油系統 | 問60 | |
冷却水系統 | 問61 | |
動力伝達系統 | 問62 | |
機関故障時の対処 | 始動不良、停止、オーバーヒート | 問63 |
異常な振動、臭気、音 | 問64 |
試験時間は 70分で、四肢拓一のOCRシートで実施されます。合格基準は、
a. 上級運航 Iが 4問以上、上級運航 IIが 3問以上正解であること( 50%以上)
b. 合計 10問以上正解であること( 65%以上)
となっています。